東京出版雑感記11 and then I renewed my ELLE BLOG.

東京出版雑感記11 and then I renewed my ELLE BLOG.

出版から半年。

本屋さんに行けばそこに自分の書籍が平積みにされており、同じ罹患経験者の方たちからメールやコメントで感謝の念を頂いてこちらがありがとうですよ。涙、涙。と温かかく、自分が読んでいた新聞や雑誌から取材の依頼を頂き、初めてお会いする方に好意を爆発させていただけて、新しい出会いも。書籍の企画や文章のお仕事を頂く日々。僥倖。

プライベートではほんの少数ではあるけれど「印税ってすごいんでしょう?なんかおごって!」と軽口が飛んでくる(実際すごくはないしね)。そして「私の方がひどい!辛い!!」という劣等感プロレスに引っ張り込もうとする勢力に遭遇したり、「私の方がすごい!尊敬しろ!!」とマウンティングしかけてくる女子勢力から全力で逃げたり、拙文を読んで「あなたってこういう人でしょ?だからこうすると良いわよ!」と決め付けてかかる“導いてあげたいウーマン”に辟易としたり。疲れてました。

だからかな、大仰だとそしりを受けてもこれって“燃え尽き症候群”? 相対評価で他人様の何かに比べられても困るのですが、6年の治療と3年の執筆が結実したら心ががらんどう。それだけガンに集中していた、とでもいうのでしょうか。棚卸しし切っちゃった、とでもいうのかな。「乳ガンの松さや香」は、いい意味で終わったような気すらする。どれだけこの6年、ガンを中心に物事を進めていたか。それは悪いことではないけれど繰り返させていただければ、それはわたしの全てじゃない。

それなら、これからどうしよう。

次どうすんの? 誰にともなく追い立てられているような、責められているような。世の中での認知や周囲の温かい労いに反して、ここ数年で一番の絶不調。しばらく仕事とお家の往復のみ。自分の殻に閉じこもり、秋から冬へと推移していく東京を肌で感じることもない日々。お買い物しても、パーティ行っても、友達に会っても、デートしてても、遠出してみても、何をやっても孤独がまぎれない。

これはよろしくない。わたしの船が、沈んでしまう。

徹底的に自分と向き合うメンタル・ボクシング。晴れがましい気持ちで迎えた蛇女の蛇年が、こんなに苦しいのは想定外。藁を掴む思いでこれからどうしたいかを書き出し(真面目だね)、ほぼ誰にも相談せず(長女だね)、でも占いだけは徹底して行かないリアリスト。今までやってこれたじゃない。全部乗り越えてきたじゃない。と己を鼓舞した直後には、なんでわたしこうなんだろう。と自己嫌悪に真っ逆さまの繰り返し。外苑前をランニングしながらリアルにマジ泣き。S区のマンションの一室で、30代半ばの大女が一人ぎゃあぎゃあと自己成長の厳しさと格闘です。脱皮する過程はそのものずばり、蛇にも似たり。

そんな自分殴りを繰り返したある晩、ひとり自宅で思い至ったのは、「就職しよう」。もう発想がニートから学ぶ最終脱出策です。

こうなったら乳がんの奮闘記を上梓した立場である以上、自分の経験を偽らないで門戸を叩こう。こういうわたしの経験を、多様性且つ価値だと思ってくれる企業でしかもう働かないとしよう。誰にも頼まれていないのに、再び自分を追い込むわたし。いつも何かが過剰です。

「ガンに罹患してもきちんと治療をすれば役割を持って社会に寄与する事は当然可能だという事と、治療後の女性の人生にも多くの選択肢が有り、自ら選ぶ事が可能なことを証明したい」とエントリーシートや履歴書志望動機に書き出し始めて3ヶ月。割愛に割愛、も一つ割愛を重ねますが、このたび航空会社の客室乗務員の内定をもらいました。

航空身体検査もパスして、術後6年検診も無事クリア。東京に帰国して2年目、再び東京を離れて挑戦の春です。3月には「37歳、ガン経験者、著述業と両立しながら空を飛べるかな?ブログ」として3度目のリニューアル。そしてたくさんの方に笑われる幸せな本に仕上げる事が出来たので、元ネタの【Pink ribbon journal】部分の公開を終了しました。本は本、ブログは別と繰り返し愛読して下さった方々、今まで本当にありがとうございました。

このブログは無論、コンプライアンス遵守ですから一般的なCAブログのような華やかさはないと断言しておきます。ステイ先で何食べてわー。とか、何買ってきゃー。みたいなものにはならないです(わたしが特に読みたくないから)。なぜ客室乗務員を志望したかという理由は100個くらいあるので、いずれ書くかもしれません。30代半ばの女が相変わらず奮闘する、その対象が病気じゃなくて仕事になった。というスタンスを、どうぞゆるく見守って下さい。

話が出来過ぎていますが、制服採寸をしてもらった1月某日。奇しくも6年前のこの日、わたしは聖路加の手術室に居ました。この冬の日を今年も喜んで迎えられる自分でよかった。こういう報告が出来て、今とてもうれしいです。