東京出版雑感記⑧

東京出版雑感記⑧

1か月ほど前に出版記念パーティをやりました。

「パーティは著者のご褒美だから絶対やったほうがいいよ」という言葉を受けて、集まってくれた99人のゲストに対して「ありがとう」を伝える場と仮置きし、綿密にアジェンダを組み、ギフトを用意したり作りこみの日々を経て、迎えた当日。

メイクをしてもらいながら、忙しく手を動かすミホちゃん(贔屓にしている美容師さん:著者近影担当)に「なんだかさや香さん、全然テンション高くないですね」と頬紅をさされて「なんだか今日パーティって感じしない。……わたし、泣いたりなんかしないんだろうね」。栄養ドリンク飲みながらタクシーで会場に向かう。

だのに、だのに。会場に入る一歩目で溢れる大波のようなみんなの祝意を一身に受けすぎて、即時涙。自分の想像力がいかに欠乏していて、場の力はいかに尊大か思い知る結果。みんな笑顔。あんなに「おめでとう」と言われたことなんて、今まであったかしら?

あっという間の3時間。夢中すぎてわたしはほぼ覚えていないのですが、そこに居たって事の方が大切なのだから、それがいいや。祝意は受け取らせていただけて、謝意は伝わったと信じます。ことさら言葉にしがみついて一冊にまとめることに必死になりましたが、一方で言葉にする野暮もまたあると思う時間になりました。生きていたから、こんな素晴らしい夜も来てくれました。