東京出版雑感記⑥

東京出版雑感記⑥

ラジオに出たり。

ラジオが好きです。松家はテレビは夜9時以降禁止だったので、わたしの第二次性徴期のお供はラジオ。先日、トオルとY君、Eさんの男子三人に交ざって「性の目覚め」についてのトーク&トーク。なぜ「子供」の頃の「性」の話ってあんなに面白いのかしら。格好のつかないアホの高ぶる自意識はそれだけで恥ずかしくて最高。

トオルはリンドバーグの渡瀬マキ。「今すぐキス・ミー」をトップテンで歌う姿を見て、あんなショートカットでボーイッシュなのに、音楽に合わせてリズムを取るマキの揺れる胸に興奮したとか。Y君のは忘れた。なんだったっけ?で、Eさんは「セキセイインコの首の匂いを嗅いだとき」という想像が追いつかないけれど、それがどれだけクレイジーな子供特有のアプローチかわたしたちは一発で会得して、椅子から転げ落ちるほど笑いに笑い倒したのです。

Eくん、変態だねー!最高!!と涙をぬぐうトオルに「さや香は?」と振られたので、こんなインコの匂いの後にはウケを狙ってもダメなので素直に「三宅裕二」と答える。「小学校6年生の頃かな?わたしニッポン放送の“三宅裕二のヤングパラダイス”を聞いてたわけ。ウチ、テレビは9時以降禁止だったから」

「で、その頃、ドラクエ3が発売になったじゃん? 発売日なんてアキバの電気屋に徹夜行列組が出たり、学校休んで買いに行った子供が問題になったり、ようやく手にした人が駅前で殴られてドラクエのソフト引っ手繰られたり、社会問題になったドラクエ3」

「で、“ヤンパラ”ではね、ドラクエ3をある特殊ルートから3本入手したと。わたしもラジオの前で聞いていて、これはすごいことになったぞー! と枕抱えて興奮していたのね。すると三宅裕二が言うわけね。『このドラクエが欲しかったら、両親のマジキス写真を送って来い!』って」

ぎゃははははは!すげえ企画だな、オイ! 3人の男子は大興奮で、大笑い。

「すごい企画じゃない? 当時まだ写真って言ったらフィルムだよ? 両親に、ドラクエ3のソフト欲しいから、キスしてくれ! しかも、それを写真撮らせてくれ! で、撮れたら撮れたで、現像に出しに行ってさ、更に受け取りにいくときの恥ずかしさったら、想像を絶するよ!? ドラクエ3を手に入れるまでのハードルが高すぎるわけ!」

あー、ハライテーーー!で、何? それをやったって話? とY君。

「いやいや、すでに両親の性に対してアンタッチャブルであることや、タブーの自覚は小6にしてそこそこあるわけじゃない? そこに踏み込んできて煽る三宅裕二を筆頭としたヤンパラを作っている大人たちの作為的な扇情に、こう、大人に子供がからかわれている、それ以上にこう大人のスイッチを無理やり入れられちゃう、的な」

お腹抱えて笑いながらも妙に納得する男子三人と対峙しながら、コロコロ笑いながらも自分の性的なものがいかに脳と結合しているか、確認するような話題で、わたしってつくづく性としての女なんだな。声や言葉に、こんなにも自分が煽られる。そういう自覚がもう少し前から出来ている上で大人になっていたら、きっとわたしはこういう人間にはならなかったし、本は出なかったでしょう。

ラジオっていいよね。